2012/07/25

浸透交雑の脅威~ノハナショウブの危機(7/25)

鳥海山周辺でのノハナショウブ報告の続きです。


向かって右側が本来のノハナショウブ、
左側は色も青っぽくなり花径も大きくなっ
て品種の血が混じってしまったものと考えられる。
一般の人が見分けるのは難しい…

鳥海山周辺では比較的自然の状態で残されていたノハナショウブ自生地が多かったものの

一部の公園化された自生地、ダム湖周辺では

栽培品種とノハナショウブが交雑してしまいその種から発芽した

個体が増殖してしまっている専門用語で「浸透交雑」と呼ばれる

遺伝子浸食が発生している状況が散見されました。

ノハナショウブは、元来、その自生地ごとに独自の進化を遂げ、

独自の遺伝的バックグラウンドを持っているものと考えられます。



しかし、ノハナショウブ自生地の周囲に

ノハナショウブの紫と黄色のみのシンプルなデザインでは物足りなかったのでしょう。

品種の血が入りまだら模様になってしまった個体

豪奢で色もさまざまな花菖蒲品種を植えてしまったために

昆虫等による自然交雑で、ノハナショウブと花菖蒲品種の遺伝子が混じってしまい

本来のノハナショウブ自生地ではありえない遺伝子構成の個体が繁殖してしまっています。



この状況は花を大切にしたい、花菖蒲を鑑賞したいという善意から来ているもので自然のありのままを保全する自然保護の立場とどちらが大切かということはなかなか天秤にかけられません。

そもそも、花を大切にする気持ちが無ければノハナショウブ自体も残って来なかったでしょうから…

ノハナショウブ自生地の周辺にお住まいの方も当然、豪奢な花菖蒲品種を鑑賞したいと思うでしょう。

ただ、花菖蒲品種は全て同じ品種はクローンですので日本のみならず世界中で鑑賞できます。

ただ、その地区独自のノハナショウブはそこでしか鑑賞できないものですので
世界中に2つとないものです。

品種の血が入り花弁が6枚に増えてしまった個体
ですから、自生地の周辺に居住される方にはそこで生活している人しか鑑賞できない
ノハナショウブの良さ、大切さを説いて、守って行っていただけるよう働きかけるしかないものと思います。

一度、浸透交雑が進んでしまうとなかなか元の自生地には戻りません。

現在、遺伝子診断で、純粋なノハナショウブと品種が交じってしまった個体を選別する方法を

弘前大学グループで開発中です。

花を愛する心をたいせつにしながら、自生地も保護できる方法を見つけられたらいいと
日々悩んでいます。

人の心の問題ですから非常に難しい問題です。

この様な件に対しご意見ご感想または御自宅周辺で同様の例がある等の報告がありましたら問い合わせ欄よりメールでお寄せ下さい。


よろしくお願いいたします。

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